ちょっと進んだ高専生のためのレビ・チビタ記号

高専3年生以上を想定して、知っていると便利なことを書きたいと思います。

「ちょっと進んだ高専生のための」と書いてあるように、ちょっと進んだ内容です。

なお、時間短縮のため数式の見やすさについては雑です。(なぜか特定の文字を添え字にするときにスペースを入れないとうまく表示できなかったり、alignが上手く使えなかったりと、悪戦苦闘しました。)

追記:スマホからだとろくに見られないことが分かったので見たい人はpdfファイルをどうぞ。

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今回はレビ・チビタ記号 \(\epsilon_{ijk}\)について紹介します。

i,j,kはそれぞれ1,2,3のいずれかであり、次のように定義されます。

\(\epsilon_{ijk} = 1 \,\, ((i,j,k)=(1,2,3),(2,3,1),(3,1,2)の場合) \)

\(\epsilon_{ijk}=-1 \,\, ((i,j,k)=(3,2,1),(2,1,3),(1,3,2)の場合) \)

\(\epsilon_{ijk}=0\,\, (その他の場合)\)

 つまり、(i,j,k)が(1,2,3)の偶置換(つまり、偶数回入れ替えると(1,2,3)となる)ならば1、(i,j,k)が(1,2,3)の奇置換ならば-1、(i,j,k)の中に同じ数字が入っていれば0(例えば\(\epsilon_{112}=0\))となる記号です。

なんでこんな記号を扱う必要があるんじゃと思うかもしれませんが、実はこれを使うと外積が簡単に書けます。

\( (\vec{a} \times \vec{b})_i=\epsilon_{ijk}a_j b_k \) (注:縮約記法を使っている、ちょっと下にある注釈を見ましょう。)

\( (\vec{A})_i \)はベクトル\( \vec{A} \)の\( i \)成分です。

注:右辺では添え字j,kが二度でてきますが、このように二度でてきた添え字は総和を取る、という記法をアインシュタインの縮約記法といいます。縮約記法には最初戸惑いますが、慣れるととても便利です。

 

もちろん、ベクトルの外積が簡単に書ける以外の利点があります。

それは次の公式があまりにも有用であることです。

\( \epsilon_{ijk}  \epsilon_{i l m} = \delta_{j l} \delta_{k m} - \delta_{j m} \delta_{k l} \)

※ こちらも左辺では添え字iで縮約をとっていることに注意しましょう。

 この公式は次のようにベクトル三重積の公式と同値なものです。

\((\vec{a} \times (\vec{b} \times \vec{c}) )_i \)

\(= \epsilon_{i j k} a_j (\vec{b} \times \vec{c})_k \)

\(= \epsilon_{k i j} a_j \epsilon_{k l m} b_l c_m \)

\(= \epsilon_{k i j} \epsilon_{k l m} a_j b_l c_m \)

 

\(((\vec{a}\cdot \vec{c})\vec{b}-(\vec{a}\cdot\vec{b})\vec{c})_i \)

\(= a_j b_i c_j - a_j b_j c_i \)

\( =(\delta_{i l} \delta_{j m} - \delta_{i m} \delta_{j l}) a_j b_l c_m \)

 

この公式を使うと、例えばrot rot A=grad(div A)-ΔAの公式は次のように証明できます。(\( \partial_i \)は変数\( x_i \)での偏微分とし、\( x_1=x, x_2=y, x_3=z \)とします。)

\( (\nabla \times (\nabla \times \vec{A} ) )_i \)

\( = \epsilon_{i j k} \partial_j (\nabla \times \vec{A})_k \)

\( = \epsilon_{k i j} \partial_j \epsilon_{k l m} \partial_l A_m \)

\(= (\delta_{i l} \delta_{j m} - \delta_{i m} \delta_{j l})\partial_j \partial_l A_m \)

\(= \partial_j \partial_i A_j - \partial_j \partial_j A_i \)

\(= ( \nabla(\nabla \cdot \vec{A} ) - {\nabla}^2 \vec{A} )_i \)

 

外積がでてくる計算やrotがでてくる計算ではかなり便利に使える記号です。

これだけだといまいち利便性が分からないかもしれませんが、この記号を使えばベクトル解析の微分に関する公式はかなりの物が一瞬で導出できるようになります。

実際に手を動かしてみると良いでしょう。

 

問1.次の公式を証明せよ。

(1) \( \nabla \cdot (\nabla \times \vec{A}) = 0 \)

(2) \( \nabla \cdot (\vec{A} \times \vec{B}) = \vec{B}\cdot (\nabla \times A) - \vec{A} \cdot (\nabla \times B) \)

(3)\( \nabla \times (\vec {A} \times \vec{B}) = \vec{A}(\nabla \cdot \vec{B}) - \vec{B} (\nabla \cdot \vec{A}) + (\vec{B} \cdot \nabla)\vec{A} - (\vec{A}\cdot \nabla)\vec{B} \)